365体育app6年度白衣授与式 式辞
本日、皆さんに医師の象徴とも言える白衣を授与します。これは、将来、医療人を目指す者としての誇りと責任を持ち、真摯に臨床実習に取り組む姿勢を育むために、授与するものです。医学教育における臨床実習は、医学生がはじめて医療の現場で医療チームの一員として行動しながら、直接患者さんと接して様々なことを学ぶ極めて重要な教育課程であり、将来医療の現場に身を置く者としての第一歩を踏み出す機会となります。
これから、その臨床実習にのぞむにあたり、 ぜひ心に留めておいてほしいことがあります。
一つ目は、白衣を身にまとい、患者さんの前に立つということはどういうことか、その意味を改めて考えてほしいということです。将来医療人を目指すという社会的責任を自覚してほしいと思います。言葉使いや態度、服装、一挙手一投足、すべてが患者さんやそのご家族、病棟の医療スタッフから常に見られているということを肝に銘じてください。
二つ目に、患者さんには常に敬意を持って接することを忘れないでほしいとおもいます。皆さんがこれから接する患者さんの多くは、病気への不安を抱え、弱い立場にあると言えます。また、人生経験においては皆さんよりもずっと先輩であることがほとんどでしょう。患者さんそれぞれに異なる背景があり、考え方や信条、価値観も多様です。だからこそ、常に敬意を持って接する姿勢が求められます。
そして、三つ目は、すべてを患者さんから学んでほしいということです。
臨床医学、医療は座学だけで習得することは不可能です。実際に患者さんを見て、話しを聞いて、触れて、五感をフルに使って、患者さんの病態の把握に努めてもらいたいと思います。そして、何事にも謙虚かつ積極的に学ぶ姿勢を忘れないでほしいと思います。医学はサイエンスであり、学問です。病気を的確に診断し、治療するためには科学的根拠エビデンスが必要です。その一方で、患者さんという存在には、サイエンスだけではとらえきれない側面があります。医学的に妥当な治療法が必ずしも患者さんにとって最適な治療とは限りません。そのため、患者さんの心の機微や思いなど、「目に見えない何か」を患者さんとの触れ合いを通じて感じ取ることは、医療において非常に重要な要素を占めます。これは、ある意味で医療の本質と言ってよいでしょう。『患者さんに寄り添う』ということは、このことを意味しているのだと思います。これらを踏まえ、患者さんとの直接的な関わりや触れ合いの意義?価値を、臨床実習を通じて改めて考えてほしいと思います。
本日、皆さん一人ひとりに白衣をお渡しします。この白衣には本学の校章と皆さんの名前が刺繍されています。皆さんが、この白衣を身にまとい、真摯な態度で臨床実習にのぞみ、社会の期待にこたえる医師を目指すことを願い、式辞といたします。
365体育app7年2月3日
和歌山県立医科大学
学長 中尾 直之